この事例は以前に私どもに競売物件を依頼され、購入されたお客様からの紹介で、特殊な依頼でした
 
息子が所有していたマンションが競売に付されたが、他人の手に渡さず、
娘さんに競売で購入させたい。
 

お客様のご希望があまりにも特殊でしたので、少し調査をさせていただいてからのお返事とさせていただきました。所有者の居所はご両親にも分からず行方不明で登記簿での権利関係も複雑、任意売買は不可能で、第三者による短期賃借権が設定されていました。

対象物件は筑紫野市湯町にあり、最低価が493万円で、滞納金なし、M嬢なる女性が家賃7万円、敷金100万円の条件で賃貸中でした。所在地の面でも、占有条件から競売でも不人気で、入札参加者もそう多くないと見られ、依頼人の娘さんの銀行による事前審査でも融資可能でしたので、代理入札の依頼をお引き受けしました。

競売における公示内容
最低売却価格 493 万円
建物名 東峰マンション二日市2
所 在 筑紫野市湯町3丁目
概要
間 取 2DK 専有面積 50.44 平米
築年数 平成9年6月
建築構造 鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根14階建7階部分

この事例のように物件明細書に賃借権等の権利が認められている物件は、買受人は現状の契約条件を引き続き引き受けなくてはなりません。また、返還義務がある敷金も引き受けなくてはなりません。たとえ、前所有者から敷金の受け渡しを受けられなくても、自腹で返還しなくてはいけない法律となっています。

今回の事例では買受金額以外にも、賃借人が退去するときに敷金の返還義務があり、所有権移転後であろうとも賃借人に退去を求めることは出来ず、引渡命令の対象にもならないことを納得の上、入札に参加していただくことになります。


私どもの物件調査報告書では、諸条件をシュミレートした結果、落札予想金額は650万円が上限で、安全価格は670〜680万円とご提案いたしました。私どものシュミレーションでは今回の入札参加者は5件前後で少なくとも3件から多くとも8件程度と判断し、転売目的の不動産業者の入札上限は600万円、自己居住目的の一般参加者だと650万円程度が上限だと、今までのデータから割り出しました。

結果的には依頼者のどうしても落札したいとの強い要望で、50万円上乗せして730万円で申込をし、次順位と78万円の大差でしたが無事に落札できました。また、売却以前の複雑な権利関係も競売で購入したことで、前所有者の権利証書や実印、本人の同意や、抵当権者立ちの同意もなしに抹消され、お客様の完全無垢な所有権名義に替わりました。


私どもの常で落札が決定しましたら、占有者や所有者、賃借人へ、物件が落札されたことを開札日当日中 に郵送で発送し通告します。今回の場合も、賃借人へ物件が落札され何時頃には所有権が移転することをお知らせいたしました。当然家賃の支払先の変更もお願いし、退去し引っ越しの要望もお伝えいたしました。

すると、10日もしない内に退去の連絡が入り、敷金返還の要求を受けることもなく自主的に退去引渡を受けることができました。どうやら、賃借人は前所有者からの依頼で、競売を妨害するために過大な契約を申告し占有を続けていたものの、前所有者とも連絡がとれなくなり占有を続けることが できなくなった模様でした。ただ、裁判所の執行官が現況調査で、虚偽の賃貸契約を見抜けず、裁判官も短期賃借権を認めてしまった物件で、買受人にとっては安い買い物になりました。

この様な事例はごくまれな例ですが、同じような物件に入札参加予定の方は返還義務がある敷金は購入予算に計上しておく必要があります。また、退去引渡交渉も通常の賃貸物件の退去引渡交渉と同様に骨が折れる交渉と覚悟しておかなければなりません。


最終的なマンション購入費用の内訳
マンション購入費 
\7,300,000-
所有権移転登記費用(登録免許税)
※2003年4月1日以降税額が1%に変更になりました
\58,100-
郵券費用 
 \1,630-
入札コンサルティング費用(消費税込み)
\315,000-
滞納金
 なし
住宅ローンの抵当権設定費用
\81,000-
委託保証料
\123,150-
合 計 \7,878,880-

依頼をされたお客様は、現在ご両親と一緒にお住いなさってます。